この本を読んだきっかけは、御年80歳を越えたタイムズの健康セクションの長年のコラムニスト、ジェーン・E・ブロディ(Jane E. Brody)さんによる「How to Age Gracefully(いかにしていい歳のとりかたをするか)」というニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事。
80歳を越えても文章でお金もらえるなんていいなと思って読んだんだけど、ブロディさんのこのコラム、「スティーブン・ペトロウさんの本にインスパイアされたので、私も真似してこの記事で同じことをやってみます」と冒頭で書いてあり、まるごとペトロウが今回紹介する本の中でやっていることの「ブロディさんバージョン」になっているのです。白髪染めやら自動車の運転やら「何を、いつ、やめるか/諦めるか」をはじめ、今後の人生で何に気をつけて何を大切にしながら老いていくか、などなど。つまり、具体的な「老い方」「人生の終え方」を箇条書きにしたようなコラムなのです。
そして、上記コラムへの反響の数がスゴイ。2000件を超えるコメントが次々に寄せられていて、アメリカも高齢化社会で多くの人が老い方に高い関心を寄せていることが興味深い。
上記コラムの元ネタとなったこの本、原題を直訳すると「老後にやらない愚かなこと」で、「老人になってもこんな愚かなことはしないぞ!集」みたいな感じなんだけど、老後や老い方に関する本を読んだことがなかった私には非常に読み応えのある本でした。
親を見て思う「こんな老人はイヤだ」を本に
目次でだいたいわかる
PART I Stupid Things I Won’t Do Today第一部 今日からやめたい愚かなことI Won’t Color My Hair (Even If It Worked for Diane Sawyer)髪は染めない(ダイアン・ソイヤ―はうまく行ってるけど)
I Won’t Double-Space After Periodsピリオドのあとスペースを二個入れない
I Won’t Be Afraid to Fall (Yes, You Read That Right)転倒を恐れない(間違いじゃないよ、言葉の通りだよ)
I Won’t Stop Rocking Those “Too Young for You” Outfits「若過ぎじゃない?」という服装でキメるのをやめない
I Won’t Limit Myself to Friends My Own Age同じくらいの歳の友達とばかりつるまない
I Won’t Lie About My Age (Even on Dating Apps)年齢を偽らない(出会い系アプリでも)
I Won’t Join the “Organ Recital”「オルガン・リサイタル」には参加しないぞ
I Won’t Deny That I’m Slow to Rise (and I’m Okay with That)”立ち上がり”に時間がかかることを否定しない(それでオーケー)
I Won’t Avoid Looking at Myself Naked in the Mirror鏡で裸の自分を見ることを避けない
I Won’t Become a Miserable Malcontent, a Cranky Curmudgeon, or a Surly Sourpussみじめで不平たらたら、イライラして怒りっぽい老人、むっつりした不満屋にならない
I Won’t Pass Up a Chance to Pee (Even When I Don’t Have To)排尿するチャンスを逃さない(したくなくても行く)
I Won’t Lie to My Doctor Anymore (Because These Lies Can Kill)医者に嘘を言わない(命に関わるからね)
I Won’t Refuse to Change My Ways自分のやり方にこだわらない
I Won’t Tell My Life Story When Someone Asks, “How Are You?”「元気?」と聞かれた時、身の上話をしない
I Won’t Get My Knickers in a Twist at “Okay, Boomer”「オーケー、ブーマー」にイラっとしない
I Won’t Be Honest to a Fault When Lying Is Kinderやさしい嘘のほうがいい時は間違いを正さない
I Won’t Worry About What I Can’t Controlコントロールできないことにくよくよしない
I Won’t Stop Believing in Magic魔法を信じることをやめないPART II Stupid Things I Won’t Do Tomorrow第二部 近い将来にやらないようにしたい愚かなこと
I Won’t Blame the Dog for My Leaky Pipes自分の”パイプ漏れ”を犬のせいにしない
I Won’t Keep Driving When I Become a Threat to Others他人に危険を及ぼすようになったら運転しない
I Won’t Stop Enjoying Myself (and Yes, I’ll Have the Occasional Candy Bar)楽しむことをやめない(たまにはキャンディ・パーを食べるよ)
I Won’t Hoard the Butter Patsどうでもいい物を溜め込まない
I Won’t Wait Until I’m Deaf to Get a Hearing Aid (or, “What? What Did You Say?”)完全に聞こえなくなるまで(もしくは「何?なんて言った?」ばかり言うようになるまで)補聴器を拒まない
I Won’t Fall Prey to Scams, Schemes, or Sleazeballs詐欺、悪徳商法のえじきにならない
I Won’t Burden My Family with Taking Care of Me家族に自分の面倒を見させる重荷を背負わせない
I Won’t Let a Walker Ruin My Style (but I’ll Still Use It)歩行器で自分をかっこ悪く見せない(使うことは使うけど)
I Won’t Smell Like a Decrepit Old Man老人臭のにおいを放たない
I Won’t Whine About How Much Things Cost物が高くなったとグチグチ言わない
I Won’t Play the Age Card年齢を切り札に使わない
I Won’t Forget My Mannersマナーを忘れない
I Won’t Be Ordering the Early Bird Special早朝割引、夕方割引で食事を注文しない
I Won’t Turn My House into a Sweat Lodge自宅をサウナみたいに暑くしない
I Won’t Repeat Stories More Than One Hundred Times100回以上同じ話をするようなことをしない
I Won’t Be Unkind to Those with Dementia認知症の人たちに冷淡な態度をとらない
I Won’t Let Anyone Treat Me with Disrespect誰にも無礼な態度をとらせない
I Won’t Lose My Balanceバランス感覚を失わないPART III Stupid Things I Won’t Do at “The End”第三部「終わり」にあたって私がしない愚かな事
I Won’t Depart This Life Without Someone Holding My Hand誰かに手を握ってもらうことなしに旅立たない
I Won’t Let Anything Stop Me from Saying I Love You . . . and Goodbye「ありがとう、さよなら」を言うことを誰にも止めさせない
I Won’t Postpone for Tomorrow What Matters to Me Today今日大切だと思うことを明日に持ち越さない
I Won’t Let Anyone Else Write My Obituary自分の死亡記事をほかの誰にも書かせない
I Won’t Forget to Plan My Own Funeral自分の葬儀を計画することを忘れない
I Won’t Die Without Writing Letters to My Loved Ones愛する人たちに手紙を書くことなしに死なない
I Won’t Be Disappointed by My Life自分の人生にがっかりしない
以上が目次。
わざと意味不明に書かれている項目もある。例えば、「オルガン・リサイタルには参加しない」という目次。「これってオルガン奏者に失礼じゃない」と思ったけれど、内容はオルガンとはまったく関係無い。お年寄りが何人か集まると決まりのように始まる「あそこが痛い」「ここが痛い」という会話をオルガン演奏に例えているだけ。あと、「立ち上がり、起き上がり(slow-rise)が遅くても気にしない」は、男性の性機能の衰えの話だし、ほかにも読んでみてああそういうことね、という章が多いです。
はっきり言って、一冊の本の中で、面白い章とネタ切れしたのかなというような章があってそれらの落差が大きい。 母親の運転免許はく奪の章などは、実話の迫力がすさまじく、のめり込むようにした読んだけれど、無理やりひねり出したようなトピックも正直あるといえばあります。
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