10月のアメリカはハロウィンに向けてまっしぐら。
怪談や怖い話が日本の夏の風物詩であるように、ホラー小説はアメリカの本好きにとって秋の風物詩。そのジャンルが好きな人にはたまらない季節です。昨年の秋、当サイトでは作家たちがお気に入りの怖い本を教えてくれる特集をしましたが、今年は、海外の本好きたちおすすめの怖い本を大捜査しましたよ。
英語圏の巨大掲示板Redditで多数の返信が寄せられた以下のスレッドから、賛成票が多かった20冊の作者や内容を、掲示板の皆さんのコメントとあわせて順不同でご紹介します。
「What is the scariest book you’ve ever read? What made it scary?(今まで読んだ本で一番怖かった本は? どこが怖かった?)」
『The Exorcist(エクソシスト)』
アメリカ人作家ウィリアム・ピーター・ブラッティ(William Peter Blatty)による1971年のホラー小説。いわゆる「悪魔憑き」にやられた少女と悪魔ばらいたちの戦いの物語。
ブラッティ自身がプロデュースと脚色を担当し、アカデミー賞脚本賞を受賞した1973年の同名映画も世界中で大ブームを巻き起こしました。なんと、映画版は日本のホラーの巨匠・楳図かずお大先生がコミック化したそうな。
50年の時を経ても、ホラーのクラシックとして読み継がれている名作、Redditorの皆さんもたくさんの思い出があるようで・・・
・古くてギイギイいってる豪邸の留守番にこの小説を持って行って自分を怖がらせるという愚かな過ちを犯したよ、ハハ。・もっと怖いのは、キンダーマン警部補が『エクソシスト』の事件を調査する、続編の『Legion』だよ。怖くて一晩中眠れなかった。・『エクソシスト』は一晩で読み切った唯一の小説だ。明かりを消す前に読み終わらないといけないと感じたんだ。私はまったく信仰心の厚い人間では無い。でも、この本は心底怖かった。・12歳の時に密かに読んで、何十年もの間怖がっている。今59歳なんだけど、断じてもう一度読むことは無いよ。残りの人生ずっと怖がるだろうから。・私を完璧なまでに恐れさせた唯一の本。信心深い環境で育ったっていうのがいけなかった!・映画も小説も両方ともいい出来だ。どっちもすごいっていうの珍しいよね。・ 一か月くらいまえにオーディオブックで聴いて、まだ動揺してる。心底ショックを受けたよ。ホラー小説とかスリラー小説好きなのに。
『The Descent』(未訳)
アメリカ人作家ジェフ・ロング(Jeff Long)による1999年刊行の未邦訳のスリラー。チベットの山岳地帯で発見された洞窟を舞台に繰り広げられる恐怖・・・閉所恐怖症の人は読めない。いや、閉所恐怖症じゃない人までそうなってしまうかも。この小説と設定がそっくりでタイトルまでかぶっているけど無関係な映画『The Decent』との比較も楽しそう。
以下、Redditorたちのコメント↓
・物語が起こるのは地中で、洞窟の完全な闇の中なんだ。そしてそこに何かが待ち受けている・・・。1999年に書かれた小説で、映画の『The Descent』と似ているけれど、小説のほうが素晴らしい。作者は洞窟探検の専門家なんだ。作品にそれが出ている。・『The Descent』、すごく怖いよね。閉所恐怖症なんだ。もうたくさんだよ。 監禁のイメージのせいでもう身動きすらできない。・この小説、大・大・大好き。同じ作者の本を全部読んで全部よかったけど、この小説は何年も心から離れない。・電子版のデータが壊れて全部読めていない。でも、最初の数章がものすごく怖かったことを覚えている。・『The Descent』は良い小説で読む価値ありだよ。興味が無くても最初の2,3章は読むことをお薦めする。 今まで出会った中で最も緊迫して驚愕した場面があった。・映画より小説のほうが怖い。
『The Shining(シャイニング)』
ホラーの巨匠スティーブン・キング先生の言わずと知れた代表作。外界から隔絶された幽霊ホテルで繰り広げられる恐怖・・・。原作を大きく変えてキング先生を激怒させたものの、これまた巨匠の才能で名作にしてしまったスタンリー・キューブリック監督による映画版も有名。
Redditorの皆さんは、本の中身よりもこの本を読んだシチュエーションの思い出を語っておられ、面白いです。
・古いホテルに滞在中にビクビクしながら読んだ。バネじかけのドアのクローゼットだっていうことを知らずに中に入ってしまって、ドアがバタンと後ろで閉まったんだ。外の光がなんとか入る最後の瞬間に振り向いたんだけど、ドアの鏡には絶叫している男の顔(本人)が映ってたよ・・・。
・40年前の暑い7月の夜に『シャイニング』を初めて読んだ。暑くて上半身裸のまま、トイレに用を足しに行くことにした。一匹の蛾がその時、私のむき出しの背中に着陸するのを選んだんだ。後で考えるとただの蛾なんだけど、その時は振り返らなくてよかったと思う。ふり返ったら、きっとマッシー夫人が死んでいて紫になって膨張しているのを見ただろうから。悲鳴を上げて家中の人間を起こしてしまったよ。
・これまでで一番好きな本のひとつ。「人間こそが本当のモンスターなのだ」という完璧な象徴になっている。キングはほかの誰にもできないサスペンスを作り上げるよね。
・この本を友達と24時間ホラー映画マラソンをやってる途中で読んだんだ。自分にとって”絶対お断り“な映画を友人たちが見始めたんでかわりにこれを読んでた。映画から聞こえる絶叫をバックにこの小説を読むのはすごく不気味だったよ。
・ いつも思うんだけど、スティーブン・キングの本っていい映画にならないよね。緊張感とかサスペンスのほとんどが登場人物の独白とか思考から来ているわけだから。『シャイニング』は多分その極端な一例だよ。キューブリック以外が作ったらあんなに良くはならなかっただろうね(それでも原作のほうがずっと好きだけどね)
『The Troop(スカウト52)』
カナダ人の文芸小説作家クレイグ・デイヴィッドソン(Craig Davidson)がニック・カッター(Nick Cutter)名義で出した2014年のホラー小説。ニック・カッターは、デイヴィッドソンがホラーを書くときに使うペンネーム。
14歳のボーイスカウトの少年たちを主人公にした孤島虐殺系ホラー小説で、キング先生が「すごく怖い。読むのが止まらなかった。正統派ホラーの傑作、心臓の弱い人にはおすすめしないけど、我々みたいな人間には完璧な冬の夜のプレゼントだ」とBlurbで絶賛。
Redditorたちは、同じ作家のほかの作品もおすすめしてます。ホラー好きは、Nick Cutterは要チェックの作家ですね。
・ジーザス、『スカウト52』があったね。しばらく動揺したっけ。面白かったけど、すごく動揺しちゃう小説なんだよ。伝統的な背筋ぞくぞく小説だ。・(次の年に出た同じ作者の)『The Deep』もおすすめだよ、ブルブル・ホラーのジャンルが好きなんだけど、本当に怖がったり気が動転することってめったに無い。でもこの本はゾッとしたし死ぬほど怖かった。腹の中に恐怖の感覚が出来上がっていって、何度か本を置かなきゃならなかったよ。・この作家、体に来るホラーがうまいよね。・『スカウト52』も『The Deep』も両方好きだけど、暗殺者たちが宗教施設にいる女の子を救出する本*2の方がずっと気に入っている。 描写されている生き物がすごく怖い。彼のほかの本よりもっと不安になる。・(同じ作者の)『Acolyte』もいいよ。正直言って、彼の作品にハズレは無いと思う。
『The Hot Zone(ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々)』
アメリカ人作家リチャード・プレストン(Richard Preston)による1994年のノンフィクション・スリラー。エボラ・ウィルスのアウトブレイクを生々しく記述して、世界中で大きなセンセーションを巻き起こしました。
作家が選んだ怖い本特集でも、「優れた作家が想像力を駆使して作り上げた世界よりも、時に現実の恐怖のほうがまさってしまう」と言わしめた一冊。リチャード・プレストンは、「ダーク・バイオロジー・シリーズ」と銘打った著作をこの後に3作(『The Cobra Event』『The Demon in the Freezer』『Crisis in the Red Zone』)続けて出し、そちらもすごく怖いようです。
・『ホット・ゾーン』の前半が怖い、リアルだから。全体的に心をかき乱される本。・『ホット・ゾーン』の科学者たちがバイオセーフティー・レベル4の研究室で仕事している箇所を読んだ時、私はレベル3の研究室で働いていた。本そのものは怖くなかった。ほどんとは知ってる事だったし、あの本は一般大衆に向けてセンセーショナルな書き方をしていたから。代わりに、作中のいくつかのエピソードで、科学者たちが安全対策を無視している愚かさのほうに驚愕したよ。・1.5日で読んだ。最初のページからはまって、読んでいる間中、超怖かった。・これもいいけど、同じ作者の『The Demon in the Freezer(邦題:デーモンズ・アイ―冷凍庫に眠るスーパー生物兵器の恐怖)』もね。両方読んで眠れなくなった。・『デーモンズ・アイ』にはやられたね。はっきり言って今まで読んだ本で一番怖いよ。・『The Cobra Event(邦題:コブラの眼)』はまじめに気に入ってる本のひとつだな。何度読んでもビクビクしちゃうんだ、ハハ・・・。『ホットゾーン』も読むよ!・むごい最初の章の続きを読むか、もう読まなかったことにしてしまうか、すごく迷ってる。・大学の宿題で読まなくちゃいけないのを期日の前の晩までやってなかったんだ。本のすべてが心臓バクバクだし、サルの施設のところが悪夢を見る怖さだ。
『We Need to Talk About Kevin(少年は残酷な弓を射る)』
英国在住のアメリカ人作家・ジャーナリストのLionel Shriver(ライオネル・シュライヴァー)の2003年のベストセラ―小説。英国で女性作家に送られる著名な文学賞オレンジ賞を受賞し、2011年に同名の映画も公開(邦題:『少年は残酷な弓を射る』)。
「私の息子はサイコパスなのだろうか?」
母と息子の心理的な葛藤が描かれるホラー、サスペンス、ミステリ、そしてまるでノンフィクションのような文芸小説でもある。
・初めて読んだ時、物語のクライマックス (読んだ人ならわかるよね) を脳に入れることを拒んでしまった。何が起こったのか真に理解するために直後にもう一度読み直さなくちゃいけなかった。起こったことを認めることができなくて。意外な展開に関しても素晴らしいし, あの母親が最後に冷たく、事務的な口調で報告しているのには、すごく不意をつかれて驚愕。・今まで読んだ本の中で映画化がうまくいった数少ない本。・映画、よくできてたよね。観終わってひどい気分になった。・本で肉体的に反応することは普段は無いんだけど、この本の最後は注意深く本を置いてゆっくり後ずさりした。
『The Yellow Wallpaper(黄色い壁紙)』
アメリカ人作家シャーロット・パーキンス・ギルマン(Charlotte Perkins Gilman)による古典ホラーで、わずか35ページの短編小説。日本語版は、英米の女性作家のホラー小説のアンソロジー『淑やかな悪夢』に収録されている。100年以上前の短い小説ながら、多くの舞台や映画、ドラマのインスピレーションとなって読み継がれている作品。頑張れば誰でも読める長さなので、洋書初心者にもおすすめ。
・長いストーリーじゃない。何も知らずに読むことをお薦めするね。見事で、そしてゾッとする。ちなみに1892年の小説だよ。
・子供の頃、車でオーディオブックを聴いた。嵐の中のドライブと不気味なナレーターの声の組み合わせで家族全員震えあがって、オーディオブックを消してしまうしか無かった。
・何も知らずに夜の9時頃に読み始めて、読み終わるまで寝れなくなった。で、読み終わったら、本のことを考えずにいられなくなって眠れなかった。いろんなレベルで深く不安になるストーリー。
・読んだことも、分析したことも、教えたこともあるし、何年もの間、この小説を高く評価してる。
・そうそう、アメリカの偉大な古典短編小説だと思うよ。上級英語の授業のために、短編集を読まなくちゃいけなかったんだ。全部、好きじゃなかったな・・・この小説以外は。超絶不気味なストーリーだ。
・みんな、この気持ち悪い高熱の時の夢みたいな短編小説を思い出させてくれてありがとう。
『Salem's Lot(呪われた町)』
ホラーの巨匠スティーヴン・キング先生再登場。キング先生の出世作『キャリー』に続く第二作目の1975年刊行の長編小説。この小説でホラー作家としての名声を確かなものにした感のある作品。初期のキングの作品では外せない。
「アメリカの小さな田舎町を舞台にした小説を書くのが好き」と巨匠自らもおっしゃっていましたが、まさにその好みのテイストが満載、閉鎖的な街と多くの登場人物が絡み合うダークなホラー・ファンタジー。
・中華のテイクアウトについてた箸で十字架を作って、靴ひもで窓につるしてたな・・・長い間・・・11歳~16歳くらいの頃、この本を読み終わったあとでね。信じがたい恐ろしさだった。・私も中学校で読んだ。しばらくの間、窓が怖かったな。・いつもこれがキングの一番怖い小説だって言っている。実は、キングの小説ほとんどは本当はホラーじゃないように感じるんだ。ホラー作家ってレッテルで出発して、そこから抜け切れていないっていうか。でも『呪われた町』は、ど真ん中のホラーで素晴らしいよ。キングの作品ってほどんどが正確に言うと超常現象スリラーだと思うんだけど、これぞホラーって感じのが読みたかったら絶対『呪われた町』だ。怖い本を読みたい人に超おすすめ。秋まで待って読み始めることもおすすめするね。効果が増すよ。(『シャイニング』は冬、『IT』は夏ね)・これでキングにはまって他も全部読んだ。上の意見に賛成、彼はスリラーが多いよね。でもこれはホラー。・震えあがって何週間も奇妙な夢を見た。私に心理的な衝撃をもたらした唯一の本。
『The Terror(ザ・テラー 極北の恐怖)』
昨年の「作家に聞く怖い本特集」では怖い本を紹介する側で登場してくれたダン・シモンズ(Dan Simmons)。「ハイペリオン」シリーズを始め、SF、ホラー、ファンタジーで多数の著作が日本でも翻訳されているアメリカ人作家で、世界幻想文学大賞、ヒューゴ―賞、ローカス賞、ブラム・ストーカー賞、星雲賞とその分野の最高峰文学賞総なめのすごい人。
『The Terror(ザ・テラー)』は、1845年にジョン・フランクリン卿率いる北極海探検チーム129名が全員失踪した悲劇を題材にしたフィクション。寒さ、飢え、病気、過酷な自然・・・読んでいるだけで文字通り震え上がります・・・。
Redditorの皆さんは、誰かがこの作品を挙げたことでシモンズのほかのこわーい作品も次々と思い出したようで・・・。
・何か所かで肉体的に恐ろしくなった唯一の小説。
・最後のほうの飢餓のシーンが一番怖かったな。精神錯乱、残虐行為、取り残されたことの実感・・・見事に描かれている、ゾッとする一作だ。
・ダン・シモンズの『Summer of Night(邦題:サマー・オブ・ナイト)』と 『A Winter Haunting(未邦訳)』 も両方すごいよ! シモンズは本当に素晴らしい作家だ。
・『ザ・テラー』、気に入ってる。でも、シモンズの一番優れたホラーと言ったら『 Carrion Comfort(邦題:殺戮のチェスゲーム)』だよ。
・『Summer of Night(邦題:サマー・オブ・ナイト)』、いいよ~。すごくおすすめ!
・なあ、『ハイペリオン』の『The Priest’s Tale』も怖いぞ。読み始めた時は、あんなふうになるって全然予想してなかったからなあ。
『Pet Sematary(ペット・セマタリー)』
またまたキング先生です!! キング先生が1983年に刊行した長編。これまたキングの代表作の呼び声が高い一作。幸せな医師一家を襲う悲劇、怪奇。単なる怖がらせるだけのホラーというより家族のドラマや、人間の心に重きを置いたなんともいえない読後感の切ない物語でもあり・・・。
この本って、キングの入門編的な本なのか、皆さん、ティーンネイジャーの時に読んでいるのが印象的です。
・12歳の時一人で自室で読んだ・・・後ろを振り返りながら・・・・15歳だった。結末は予想だにしないものだった。死ぬほど怖かった。キングの一番怖い本だ。・こいつのせいで2週間はよく眠れなかった。・実はこの本は全体的にそれほど好きじゃない。ちょっとぱっとしないよね。でも緊迫感と恐怖がゆっくりと積み重なって行く様は、達人の域だよ。・この本はもう少しのところで日の目を見なかったはずの本だ。キング自身が語るところによると、書きあがったものを読んで個人的に気分が悪くなってしまってゴミ箱に捨てたんだって。奥さんが見つけて生き返らせたんだよ。・怖すぎて動揺してしまって読み終えることができなかった唯一の本。半分くらいのところで次にどうなっていくのかがわかるんだよ。それを読むのが耐えられなかった。・中学生の時、眠るために夜遅くに読んだんだ。20年後の今も悲しみと恐怖を覚えている。・キングの本でお気に入り。ゼルダは永遠に私の悪夢の中で生き続けている。
『The Haunting of Hill House(たたり/丘の屋敷)』
昨年の「作家による怖い本特集」でとにかく登場回数が多かった今作、怪奇文学の女帝シャーリー・ジャクスン(Shirley Jackson)の1959年刊行の代表作。典型的な幽霊屋敷モノのストーリーでありながら、人間な普遍的な孤独や悲しみ、狂気が織り込まれた名作です。よかったら、筆者の感想記事もどうぞ↓
Redditでもコメントは少ないものの賛成票が多かった一作。しかし、作家たちによる支持ほどではないように思います。文学を読み慣れた人や書いている人のほうが真の魅力がわかる本なのかも?
・ジャクソンは、とても微妙なやり方で物語に狂気を織り込んでいる。なんでもないことのように見えたのに、次には自分の正気を疑うようになる。人生の中の最も無害な出来事がゆがめられ醜くなる。スティーヴン・キングの小説もそんな感じ。・丘の屋敷は、綿菓子のような甘い夢でもあるし、幻覚のような悪夢でもあるんだ。・この小説を三晩かけて読んで、その間毎晩不穏で明瞭な夢を見た。二歳になる私の息子がキッチンの床に転んで頭を打って倒れているところに、家族や友人がやってきて私がやったと責め立てるの。気分の悪さで目覚めた。この本を読み終えたら、夢はピタリと見なくなった。たくさんのホラー小説を読んでいるけれど、あんな経験は初めて。・壁紙のシーンと手をつなぐところがダメ・・・。小さい頃、壁紙にいつも人の顔が見えたの。だから、そこが特に怖かった。
『The Amityville Horror(アミティヴィルの恐怖―全米を震撼させた悪魔の家)』
映画『悪魔の棲む家』の原作としても有名な、アメリカ人作家ジェイ・アンソン(Jay Anson)による1979年刊行の実話に基づいた(一応)ノンフィクション。
ニューヨーク州のアミティヴィルという街に実在する住所オーシャンアベニュー112にある豪邸、通称「ハイ・ホープ」。1974年11月、その屋敷の住人ディフェオ一家に惨劇が起こる。子供の一人(23歳)が就寝中の両親と兄弟姉妹全員を射殺したのだ。「やれと言う声が聞こえたからやった」、そう語って自首した彼は逮捕され事件は一件落着のように見えた。しかし、その後に屋敷を買い取ったラッツ一家に次々と怪奇現象が襲い掛かる。この本はラッツ一家が入居してから屋敷を捨てて逃げだすまでの28日間を詳細に追ったリポートである・・・・・・ということになっているけど、実際はラッツ一家が財政難をなんとかするためにでっち上げた筋書きという説が濃厚。審議を巡って裁判沙汰にまでなった本。
Redditorの皆さんも、フィクションとして読むかノンフィクションとして読むかが気になるようで・・・
・全部でたらめだってわかってんだけど、フェイクの事件報告としてよく書けている。パルプ小説版のブレア・ウィッチ・プロジェクトだね。・人生で3回(14歳、18歳、26歳)読むのにトライしたんだけど、落ち着かなくなって一人で家にいるのが怖かった。うまく説明できないんだけど、ストーリーの何かが頭に入り込んで日常の普通のことが邪悪なものになるというか・・・。怖がりたい人には超おすすめする。・わかるよ、自分もちょっとゾッとしちゃったけどうまく理由を説明できない。近所の人と思われる男がビールを持って引っ越したばかりの家族を歓迎する挨拶をしに来て、唐突にいなくなるところ、男の服はひどく汚れていて場にそぐわない。本ではそのエピソードはそれ以上掘り下げられないから、変だなと思った。そうしたら映画にもそのシーンが出てきて、悲鳴を上げちゃったんだ。アミティヴィルの読む前に、ある男が新しい家の持ち主を怖がらせて追い出したっていうニュースかなんかを読んだせいかな。でも確かにあのシーンには、何か自分にはしっくりこない不気味さがあるんだ。・私もいつも映画のあの場面のことを不思議に思っていた!あなたの言う通り、なんでかわからないけれどゾッとする。場違いっていうか・・・。すごく無害に見えるんだよね、男が消え失せるまでは。で、なんだったんだろうっておいてきぼりになる。・若い頃読んで、ほんとに怖かった。実話の可能性があると考えると特にね。・映画も怖いよ。現実の屋敷に起こったことは悲劇だ。かなり疑わしくもあるけどね。殺人事件は本当なんだ。でも、幽霊屋敷のところはでっちあげだよ。何年もの間、屋敷がすごい観光地になった時点で、新しい家の持ち主にでっち上げだったことを言わなかったかどでラッツ家は訴えられている。・もう真実は暴かれてるよ、あんなゴミみたいなことは全く起こってないって。70年代から2家族くらいあの屋敷に住んでるけど、なんの異常な現象も起こっていない。初めて読んだ時はビビったけど、全部捏造だと知った今はそれほど怖くはないな。
『It』
またキング先生・・・。もともとは1986年刊行の小説ですが、2017年に映画化されて大ヒットしたことから新たに若い世代にも読み直されたキング先生の代表作の一つ、大作です。しかしこの小説は、キング先生特有のあの「無駄な長さ」が時の流れの切なさを醸し出すのによく効いている。7人の子供たちの友情、成長、喪失。少年少女のパートと彼らが大人になってからのパートが描かれ、なんとも懐かしく切なく恐ろしい青春ホラー小説になっています。世界中のピエロの肩身を狭くした一冊。
・ひどい悪夢を見るようになっても読むのがやめられなかった。キングのようにサスペンスを構築できる作家はいない、そしてそれがこの『IT』で最高に達している。浴室の章を読んでいる時に私が感じた恐怖は現実離れの域だった。・高校3年の時に読んで、そのあと6か月は電気付けたまま寝てたっけ。・キングの小説でトップを争うなって思うものは全部このスレッドに出てるね。私は正直『シャイニング』『呪われた町』『It』が彼のベスト・ホラーだと思ってる。ダーク・タワーも素晴らしいけど、あれはファンタジーのジャンルだよね。・初めて読むと素晴らしいよ。二回目からは無駄が多いように感じる。・今までで最も怖い本と言うだけでなく、人生で一番気に入っている本でもある。真に素晴らしい芸術のなせる業だ。
『Annihilation(全滅領域 )』
地球上に出現した謎の領域『エリアX』。政府の極秘機関「サザーン・リーチ」に管理されたその領域には何度も探索隊が派遣されている。主人公は生物学者として、新たに派遣された女性研究者のみからなる探索チームに加わるが、そこで彼女が見たものは・・・。
アメリカ人作家ジェフ・ヴァンダミア(Jeff VanderMeer)によるサザーン・リーチ三部作の第一作。この作品の後、『監視機構』『世界需要』へと続く。2018年にナタリー・ポートマン主演で同名映画化(邦題:『アナイアレイション-全滅領域-』)。ポートマンは原作のイメージにぴったり。怖いと言うより不穏・不気味さが際立つ小説。
・風邪をひいているときに読んだ。熱に加えて作中の信頼できない語り手と希薄な現実感のせいで、もう二度とすることはないだろうというまったく表現不可能な経験をした。
・主人公たちがタワーにいるところは、いつも心に鳥肌が立つように感じる。・ほかに観た人ほど映画が怖くなかったんだけど、本はそんなに怖いの? 映画のテーマには惹かれるものがあったから読んでみたいんだけど。・映画の監督は、彼が小説から感じた「印象」を映画化しているって言ってるね。小説のあらすじを追ってはいないんだ。この小説、三部作の最初なんだけど、三作がそれぞれまったく違うしすごくいいよ。・反対意見:続編は一作目に比べてかなり弱いし、急いで書いた感じ。確か三つとも一年以内に書いたと思うよ。そのせいで、続く二作が最初に比べて締まりがないし面白くなっていない。私見だけどね。・映画も小説も違うやり方で違うテーマを模索している。小説のほうが単刀直入でスリリング、映画ほうはじっくり深く考え込む感じ。・映画版と小説は全然違うね。本のほうが設定も彼らが見つけるものもずっと不気味。・三部作の二作目で文字通り肉体的に震えあがった。ほかのどの本でもあんなにビクビク怖がったことはない。・機上で乱気流の中、この本を読むと言う過ちを犯してしまった。以来、心拍数が下がらない。・作者がこの本の中で読者をもてあそぶやり方は、これまで経験したことがないものだったよ。・この本のすべてが気味悪い。特に、自然や環境の描写。すごくおすすめの本だけど、夜にクローゼットのドアはしっかり閉めて読んでね。
『House of Leaves(紙葉の家)』
・『紙葉の家』は、マインド・ファ○ク文学の傑作だ。(上級読者向け)・本が怖いだけじゃなくて、自分の正気を疑うようになるのがね・・・。・自分の家の普通の騒音がこんなに怖いと感じたことは無いよ。読んでる時に朝の2時頃になっちゃったんだけど、家の中が静かで、暖房がオンになったんだ。漏らしそうになった。・ライティングのスタイルは最初は奇妙だ。読み続けているうちに、なぜそうなのかわかるようになる。・二回の挑戦を要した。一回目は三分の一か四分の一くらいでやめちゃったんだ。何年も後に変な形式のストーリー語りなんだって知った上で読んだら、読破できたよ。すごく気に入った。再挑戦した価値はあったね。・本を手に入れた時、表紙がページに対して小さかったんだよね。欠陥品だと思ったんだけど、ストーリーを読んだ後、出版社がわざとそうしたことがわかった。・本を開く前から既に不穏。・そういう小さな仕掛けがたくさんあって、不安な気持ちになる。「House(家)」っていう言葉はすべて青っぽい色で印刷されているんだ。裏表紙の出版社情報の「ペンギン・ランダムハウス」までもが。・読んでいて文字通り頭がおかしくなった。ただただクレイジーな本。
『On the beach(渚にて 人類最後の日)』
1957年(!)にイギリス人小説家ネヴィル・シュート(Nevil Shute)によって書かれた終末世界モノの名作。1959年にグレゴリー・ペック主演で映画化もされている。
時は1960年代、第三次世界大戦後の世界。核戦争に汚染された環境のせいで人類は北から順に滅亡して行く。しかし、南半球のオーストラリアではまだその魔の手は届かず、人々は迫りくる死を前にそれぞれの日常を送っている。安楽死の薬を配布されながら・・・。人間は最後の日々をどのように生きるのだろうか。静謐で独特な雰囲気のSF。
・今まで読んだ本の中でもっとも心を打ち砕かれた本だ。恐ろしい描写なんて実は何もないのに。誰もに迫りくる死がわかっているのがひたすら重いんだ。・起こりつつあることが避けられないという、その恐ろしい感じ。読み通すのが困難な本だったけど、今では気に入っている本のひとつだ。・生涯のベスト本のトップ50に入る。20年前に読んで、その印象はいまだに続いているし、すべてのシーンを思い出せる。・読み終わった後、窓の外を1時間くらいじっと見ていたよ。そして猫をぎゅっと抱きしめた。・この本を読んだ後ほど妻を強く抱きしめたことはない。
『Dracula(吸血鬼ドラキュラ)』
アイルランド人作家のブラム・ストーカーによる言わずと知れた怪奇小説のクラシック。1897年刊行。スティーヴン・キング先生が『呪われた町』の序文で、子供の頃初めて読んだ大人向けの小説がこれで、そのストーリーにも、手紙や報告書を重ねていくスタイルにも、いかにこの小説に打ちのめされたかを語っておられました。ホラー、ファンタジーの流れを一気に変えた古典、今読んでも思いのほか面白い一作。
・古典だよね。すごくぞわぞわ来るよ。何が起こるのかわからないし、文体が恐怖を注入している。
・賛成だよ、あんな感じに恐れおののいたことがなかった。すごくどっぷりはまった。
・まさしくそうだ、ブラム・ストーカーはどうやったら読者をストーリーに引きずり込めるかをわかっている。あの恐怖の感覚はリアルだ、それでも読み続けたいんだよね。
『The Wasp Factory(蜂工場)』
スコットランド人作家、イアン・バンクス(Iain Banks)による1984年の衝撃的なデビュー作。過去に去勢を余儀なくされた16歳の少年は学校にも行かず、父親とともに離島でひっそりと暮らしている。そこに精神病院を脱走した兄から「今から帰る」という電話があって・・・? サイコスリラーの名作。出版当時、残酷描写に対して批判も多かったということなので、心して読みましょう。
・超絶不気味。ネタバレに気をつけて!・これ! 何年も前に読んでいまだに抜け出せない。これ以上無いっていうくらい怖いし、出版史上もっとも不穏だ。・この本は私の脳に消せない傷を残した。イアン・バンクスのほかの作品をいくつも何度も読んでいるけれど、これだけは再読できない。・ただただ不穏な小説。
『The Handmaid’s Tale(侍女の物語)』
・ちょっと違った感じの怖さだと思うけど。アトウッドの書いたディストピア国家が現実からそう遠くないんじゃないかと感じることがある。それが怖い。・大多数の割合の市民や政治家がギレアドをOKとしている箇所が超怖かった。
『The Road(ザ・ロード)』
アメリカの大御所作家コーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy)の2006年のピューリッツァー賞受賞の小説。2009年にヴィゴ・モーテンセン主演で映画化。終末世界をさまようように旅する父と子の物語。息子さんのいる人が読んだらしばらくは立ち直れないかもしれない小説。
余談だけど、ボブ・ディランよりコーマック・マッカーシーにノーベル賞をあげてほしかった。もう彼も88歳だし、生きているうちにきっととれない。村上春樹でがっかりしている場合じゃない。時間が無い!!
・この小説には、はっきりとした一線があるんだ。この小説を退屈でだるくて馬鹿げていると文句を言う人たちがたくさんいる。あなたは必ずその人たちに子供がいないことに気付くだろう。私はこの本を二歳児を膝の上で遊ばせながら読んだ。これほど痛ましい本は人生で読んだことがなかった。父親であることを受け入れて多くの新しい本能に目覚めたんだ。すべての死に物狂いの決断、そのアドレナリン、罪、犠牲、読後、何週間も打ちのめされ、放心状態になった。でも自分の魂を覗き込む機会を得たよ、そうだ、自分は子供のために犠牲になる準備が出来ているって。真に恐ろしかった、ほかのどの本もあんなふうに私を死の必然性と向き合わせはしなかった。ヘッセも、ヘミングウェイも、サルトルもスタインベックも。二度と読み返さないけど。
・この本を読んで本当によかった。そして絶対に二度と読まないだろう。
・読んで泣いた初めての本。読み終えた時、夫が眠っていてよかった。醜く嗚咽していたから。
・今まで読んだ本の中で一番暗い。 希望が無く、言葉がなくなった。
・上のコメントに賛成。子供が生まれる前は、暗い小説で想像するのが難しいと思った。で、子供が生まれた後、読んだんた。たった一人の私の息子。今まで一冊の本から何かを感じあんなに泣いた経験はない。
・息子が一歳くらいの時に呼んだ。恐ろしい。レンガで殴られたみたいだ。
以上、全20冊、はっきり言って全部読んで損なしのすごいセレクションです。
賛成票数が上記の作品より少なかったので割愛しましたが、伊藤 潤二の『うずまき』や『ベルセルク』を挙げていた人もいましたよ。
「一番怖い本(The scariest book)」の「怖い」の解釈が人によって大きく異なるため、血しぶきドバドバ系から、お化け屋敷系、じわじわ心理的に追いつめ系から死と生を深く見つめる純文学系まで、幅広く名作が勢ぞろいしましたね。
さあ、皆さん、ガンガン読んでガクガクブルブル震えあがりましょう!!
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