【本棚探偵】ジェーン・グドール博士の本棚

 有名人の本棚にある本を勝手に特定する本棚探偵、今回はイギリスの動物行動学者ジェーン・グドール博士の本棚を捜査しました。


ジェーン・グドール博士はこんな方

  さて、「最近、心が荒涼として冷え切っている・・・」、そう感じているあなた、下記の動画を観ましょう!たった1分半です! 

Jane Goodall Releases Chimp

 グドール博士のチームが保護した瀕死のチンパンジーのウンダが回復して自然に帰るお別れの場面。森に行きかけたウンダが戻ってきて、「ありがとう、さようなら」とでも言うように自ら博士をハグしにゆく・・・。

 種を超えた愛と感謝の瞬間。何度観ても素晴らしい! 

 でも頼むから、あとで「私はあの”ウンダ”の中の人だった!」とかいう暴露が出てくる展開だけは勘弁してよ?

 この動画に出てくるグドール博士は、イギリスの動物行動学者、国連平和大使、最近は環境保護活動家としても大活躍していらっしゃいます。女性がキャリアを築くことが難しかった時代、秘書としてキャリアをスタートさせながらも、研究への飽くなき情熱を持ち続けて現在の地位まで上りつめました。最近、子供向けの伝記本でも取り上げられることが多くなってきましたよね。


グドール博士はどんな本を読んでいる?

 そんなグドール博士の本棚画像ですが、「Dr. Goodall Recycles a Beloved Shirt」というJane Goodall Institute USAの動画からいただきました。あまり学者の本棚という感じがしない。普通の本好きの女性の本棚に見えます。なんだか嬉しい。 

① 『The Hidden Target: A Robert Renwick Novel(未訳)』

 スコットランド系アメリカ人のスパイ小説で知られる作家ヘレン・マッキネス(Helen MacInnes)の晩年1980年の小説。元NATOの国際諜報部員ロバート・レンウィックが活躍するシリーズの第二作目。

 ② 『Forrest Gump(フォレスト・ガンプ)』

 アメリカ人作家ウィンストン・グルーム(Winston Groom)の1986年刊行の小説。もはや古典名作映画になりつつある同名映画の原作。映画とは大きく異なるが、別の良さがあると言われている。


③ 『The Shadow of the Wind(風の影)』

 昨年2020年、55歳で病没したスペインの作家カルロス・ルイス・サフォン(Carlos Ruiz Zafon)の世界的なベストセラーとなった代表作。少年の成長物語であり、ミステリあり、冒険ありで、幻想的で、とにかくすごい小説・・・と聞くけど、未読の私にはよくわからない。読まねば・・・。


④ 『The Inheritors(後継者たち)』 

 ノーベル文学賞、ブッカー賞受賞のイギリスの巨匠ウィリアム・ゴールディング(William Golding)の『蠅の王』の翌年1955年に発表された小説。ネアンデルタール人と人類の遭遇を描いた寓話的な作品。


⑤ 『Espresso Tales: 44 Scotland Street Series (2) (未訳)』

 『No.1レディーズ探偵社』シリーズなどで知られるスコットランド人(国籍はジンバブエ人とイギリス人)の作家アレグザンダー・マコール・スミス(Alexander Mccall Smith)による2005年の小説。

 このアレグザンダー・マコール・スミスという方・・・すみません、今日まで詳しく存じ上げなかったんですけど、この方、なんなんですかね? 

 アフリカ生まれ、大学の法学の先生をしながら児童書30冊出版、その後大人向けの本でも大成功、英語圏での売り上げは2010年の時点で累計4千万部、世界46か国で翻訳版出版。すごい作家・・・と思ったら、エディンバラ大学の医事法学名誉教授、医事法と生命倫理学の権威(元ユネスコ国際生命倫理委員会メンバー)、ボツアナ大学設立に寄与(ボツアナで暮らして教鞭もとっている)。アマチュアミュージシャンとしての活動にも熱心で、ボツアナ初のオペラハウス創設、その初公演のためにオカバンゴ・デルタ版『マクベス』の音楽台本執筆・・・・・・まだまだあります・・・。

 とにかく一人の人に才能と業績が集中し過ぎです!! レオナルド・ダ・ヴィンチとかクイーンのブライアン・メイ並みに納得いきません!! 一体こういう人達の脳みそはどうなっちゃってるんですか? ひとつの才能にも恵まれずあえいでいる私のような人間のために、どうにかして人間の能力はばらけるようにしてほしいものです。

 話をジェーン・グドールの本棚に戻します。この『Espresso Tales』は、アレグザンダー・マコール・スミスの数あるシリーズ作品の中でも邦訳が出ていない、44 Scotland Street(スコットランド通り44番地) シリーズの二作目の本。もともとは新聞連載を本にしたもの。

 エディンバラのアパートの一室を間借りすることになったギャップ・イヤー(高校と大学の間でお休みをとること)期間中の女子を主人公に、バイト先での出来事、ルームメイトやアパートの住人の人間模様がまるでアメリカのシットコムのように描かれている小説。

 シリーズで合計14冊が発刊されている。最新刊である第14巻は昨年2020年発売! まだ続いているとは・・・アレグザンダー・マコール・スミス、現在70代、変わらず書きまくっているようです。


⑥ 『Chocolat(ショコラ)』

 イギリス人作家ジョアン・ハリス(Joanne Harris)による1999年の小説。アメリカで映画化権が買われ、ジュリエット・ルイスとジョニー・デップの主演で同名映画化されたことで、ハリスを一躍国際的なベストセラー作家に押し上げた一作。

 フランスのある田舎町に小さな娘を連れて越してきた謎めいた女性。彼女が突如そこで開店したチョコレート屋が古い町の人々の心を少しずつ変えてゆく・・・空腹時に読んではいけない小説。


⑦ 『Spillover: Animal Infections and the Next Human Pandemic(スピルオーバー――ウイルスはなぜ動物からヒトへ飛び移るのか)』

 これ、2012年の本なんですけど、むちゃくちゃ「今」な本ですね。
 『Ebola(エボラの正体)』などの著書でも知られる、疫病・感染症を追い続けて来たジャーナリスト、デビッド・クアメン(David Quammen)の著書。動物など他の種から人間へもたらされた病原体、つまり異種間伝播(スピルオーバー)の実態に迫ったノンフィクション。コロナウィルスがコウモリを介して人間に伝染したと言われている現在、改めてこの本が再注目されている。

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 以上、グドール博士の魅力的なお人柄が溢れている本棚ですよね。本棚画像をいただいた元の動画の解像度が高く、本棚の本すべてが特定できそうなレベルですが、キリが無いのでこのへんで。お時間のある方は、博士の本棚のほかの本も捜査・特定してみて下さい。きっと面白い本が見つかりますよ。

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